【中目黒の10坪店舗<空中階>】飲食店・超激戦区エリアで、7.5坪の“オレの城”を手に入れた理由は、「手紙」にあり!? 大衆酒場「チャン栓チャン」の澁谷さんにインタビュー!〈前編〉

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

今回は、2018年、飲食店・超激戦区の東京・中目黒に7.5坪の大衆酒場「チャン栓チャン」を開業した澁谷さんにお話をうかがいました。

■楽コーポレーションで修業。独立するまでの12年

いつか将来は自前のお店を持ちたいという気持ちがあったので、23歳のときに独立を応援してもらえる「楽コーポレーションhttps://raku-co.com/」に入社して、12年間、独立するためのノウハウを学びながら開業資金を貯め、2018年に満を持して起業しました。

といっても少しだけ準備期間があって、お世話になっていた方から、「馬喰横山で6坪のカフェを新規に始めるから、夜6時から12時まで居酒屋をやってくれないか?」と頼まれたんです。 これは独立したときのシミュレーションにもなるなと思って、開業する物件が見つかるまでならという約束で半年間やってみました。

その店は、昼はカフェ、夜は居酒屋という業態。

当時の馬喰横山って街は、夜は本当に人が歩いていない問屋街で、しかもお店も真っ暗な場所にポツンとある感じで……。内外装もカフェなので居酒屋としては苦労があったんですが、何とかそこで常連さんを見つけることができました。10席くらいの店だったんですが、いいときで2回転、1日の売上でいうと6万円くらいの実績も出て、その経験が開業前の自信につながりましたね。

■地元·中目黒にこだわった物件選び。「手紙」で熱意を伝える

もともと地元が中目黒だったので、開業するには中目黒という想いがあって。なので、開業における優先順位は家賃や設備よりも、エリアが第1位。中目黒の物件が出るたびに、家賃が高かろうが、駅から遠かろうが、空中階だろうが、全部申し込みました。でも、人気の街なので申し込みが殺到し、僕みたいに個人事業主で実績がない人間は書類ではじかれる……。半年間に10件くらい申し込んだけど、全部だめで……。

いまの物件は駅近ですし、これもたぶんダメだろうなと思いながらも、なんとしても成約したくて、申し込みの際に自分の経歴や、この物件でこういう店がやりたい、という思いを手紙にしたためて、不動産屋さんには「この手紙を大家さんに渡してください!」と伝えてアピールしました。

そうしたら、物件の大家さんから連絡がきたんです。

大家さんは以前、お寿司屋さんだったという方。初回の面談で、一緒にランチを食べに行って、そのときは世間話くらいだったんですが、ご縁があったのか、その次に呼ばれたときに「君に任すから」と言われて……、その瞬間は本当にうれしかったですね。

大家さんが、僕の手を取って、「君に決めたから頼むよ。この街の通りも高齢化が進んでいるので、ぜひ若い方にやってもらいたい」と言われ、「これは、やるしかないぞ」と腹をくくりました。

■地元っ子だから感じていた、“フツー”じゃない店づくりのポイント

開業する際、最初は客単価3500~4000円くらいの刺身や焼鳥などを出す、いわゆるフツーの居酒屋にしようと考えていたんですが、中目黒周辺のいろんなお店をみていくうちに、より尖ったお店にしよう、と考え直しました。

そこで考えたのが、客単価2500~3000円で酔っぱらって帰れる、そしてボトルキープができる店。うちの店がある中目黒のエリアって、ひとりでサクッと寄れる店がけっこう少ないなと、自分自身で感じていたんですよね。

いまの店は7.5坪、22席です。

開業の際、客単価をできるだけ下げようと決めて、そのために客席をたくさん取ろうという発想になりました。なので、キッチン内にビールサーバーや洗浄機があるのはフツー当たり前かもですが、これをなくして1席多く確保しました。また、満席の時にはお客さんにも協力してもらって、椅子を取っ払って、立ち飲みにしたりもしています。とにかくひとりでも多くお客さんに入ってもらうことを重視したんです。

■7.5坪店舗だから“こそ”、苦労したこと、良かったこと

2018年に開店してから1年半が経ち、おかげさまで満席になる日の方が多いので順調と言えます。週末は22席の店が、1.5 ~2回転、土日は昼2時からやってるので、さらにたくさんのお客さんがいらっしゃってくれています。

もちろん、小さな店だからこそ苦労した点はたくさんあります。 でも逆に狭くて良かったこともたくさんあって、お客さん同士が気を使ってくれますし、コミュニケーションも自然に生まれるのは、見ていてうれしいですよね。

狭い店だから“こそ”できることがあるんです。

テーブルが狭いから“こそ”下げ物をチョットまめにする、灰皿が不要なお客さんと気づいたら灰皿を“こそっと”下げてみる。そんな気配りをすれば、お客さんも気が利いているな、と思ってくれます。

なにより、小さい店だと、お客さんが協力的になってくれて、店全体で一体感が生まれるんですよね。これは、店が狭くて良かったというメリットだと思います。

‐澁谷さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

「中目黒に開業したい!」とこだわった澁谷さん。

「このエリアで開業したい!」というお題をいただけると、我々、10坪不動産も意気に感じて、物件探しにも気合が入ります。地元にいたからこそわかる、「このエリアに、こんな店があるといいな」という視点も飲食店開業の参考になりました。

後編では、これからの展望や、同じく10坪飲食店を目指す読者の方へのアドバイスをお聞きします!

【※取材店舗情報※】

店舗名:大衆酒場 チャン栓チャン

住所:〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-3 GTテラス 2F

営業時間:月~金曜日 17:00~、土日祝 14:00~、日曜営業

定休日:不定休

電話番号:03-6303-2677

東急東横線中目黒駅から徒歩1分

<食べログ>

https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131701/13225197/

kazuki nishiyama