【芝公園の10坪店舗<路面店>】トランプ大統領の“来日・来食”は、日本のハンバーガー新文化のきっかけ。「肉好き垂涎のハンバーガー超人気店」は、初期費用200万円のキッチンカーから始まった!「マンチズバーガー シャック」のオーナー・柳澤さんにインタビュー。

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。今回は、米·トランプ大統領が来日時に食べて話題となった、“肉好きを120%満足させる”ハンバーガー専門店「MUNCH'S BURGER SHACK (マンチズバーガー シャック)」。連日、行列が並ぶ人気店に育てた柳澤さんにお話をうかがいました。

■実店舗開業前に、「移動販売」のハンバーガー専門店で起業

もともと音楽活動をしていたので、夜はライブがしたくて、日中の早い時間にあがれるような仕事はないかなと始めたのが精肉店でのアルバイトだったんです。当時もいまも、肉が好き、ハンバーガーが好きで。それが高じて、昼間は移動販売、夜に音楽がやれたらいいなと、移動販売から商売を始めたのが、きっかけです。いまから考えると甘い考えだったかもですね。

実店舗を開くには初期費用で1000万円はかかると聞いていて、当時の僕にはそんな自己資金もなくて、借金するのも気がひけたので、まずは移動販売で軍資金を貯めようと思ったんです。

移動販売を始めた際の自己資金は350万円。そのうちの200万円でキッチンカーをつくってもらって、ハンバーガー専門店をスタートさせました。移動販売はかれこれ5年半やっていたかな。平日は東京·有楽町の国際フォーラムや大手町サンケイビルの前など、土日はサッカーや音楽イベントの会場で、ほぼ毎日のように出店していました。

■見様見真似で、レシピを考案

移動販売時代のハンバーガーは、今よりもサイズが小さくて、値段も1000円以内に抑えていました。精肉店に勤めていたといっても料理の経験がなかったので、いろんなハンバーガー屋さんを食べ歩いて勉強したり、お客さんからの「昨日の美味しかったね」という声を参考にしたり、見様見真似と試行錯誤で、日々、メニューの研究をやっていました。

■1000万円を貯めて、満を持しての実店舗開業!

ハンバーガー専門の実店舗を開業するために、まずは移動販売で1000万円を貯めることを目標にしていた頃、いち早く夢を叶えてお店を始めた先輩たちが金策に走る様子を見たりして、お店の運営は生半可ではできないなと感じていました。いまなら、言えますが、お店をつくることがゴールじゃないんですよね。お店を継続していくことが大切なんですよね。なので、「オレは無借金でやろう」と思って、移動販売をとにかく頑張って続けました。そのうちに、ご縁あって埼玉県のあるプールに隣接する売店の販売を任されたんです。そこがものすごい人気のある場所で。夏場の2か月·50日間、休みなしで働いて、そこで懸命に仕事をしたことで、開業資金の1000万円が貯まりました。

初めて実店舗をオープンしたのは、いまのお店からすぐ近くの12坪の居抜き物件です。内装にもこだわったなあ。物件取得費含めたら、1000万円のうち、950万円も使ってしまって……。予算ギリギリで「ちょっとヤバいかな」と思いながら開店したのを覚えています。

■芝公園エリアを選んだ理由。「企業と住宅の混在」に目を付けた

移動販売のころに、田町駅前で出店したことがあったんです。それまでも、いろんなところでハンバーガーを売っていたんですが、安くはない価格設定なこともあって、どこで売っても20食程度が限界なところ、80食も売れたのが芝公園·田町エリアだったんですよね。

そこで、分析してみたんです。そうすると、会社勤めの方と、地域住民の方、両方のお客さんが多かったんです。

実店舗の開業後にはデリバリーにも力を入れたいと視野に入れていたので、「企業と住宅が混在しているエリアはいいぞ」と、この2つのキーワードにこだわって、立地と店舗探しをしました。

■開店後の苦労。移転した理由

最初のお店がオープンしたのが、2011年1月31日。スタートしてからは比較的順調でした。小さなお店だけに、回転率が重要。その点、移動販売の経験が活きました。移動販売を経験した人ならわかると思うんですが、調理もサービスもせっかちなんですよ。回転が得意(笑)。そんなときに、開業の約1か月後に東日本大震災が起きました。世の中の自粛モードで営業が難しくなって、2週間ほどディナーの時間にお店を閉めたこともありました。

いまのお店は、1階と2階の30坪のお店です。以前のお店は1、2人のお客さまがほとんど。3名以上で入店されると、席の配置に困ったりしていて。団体さんのお客さまにも対応したいなと思って移転しました。

ここは、もともとイタリアンのお店だったんですが、設備もそのまま使えるものがあって、相性がいいなと思ったんです。

■お店のこだわり。主役は「肉」!

ハンバーガーの“主役は肉”だってことにこだわって、米国メーカーの指定メーカー·指定工場から取り寄せています。ひき肉のパティをつかうお店が多いなか、チョップ(手切り)にしてステーキ感覚の“肉肉しい”パティにこだわっています。

内装は視察も兼ねて行ったNY·ブルックリンの街並み、店舗のイメージにこだわりました。木と鉄をうまく使っていてかっこいいんですよね。これは余談ですけど、NYのハンバーガーは豪快でそれなりに魅力的なところもありますけど、日本のお店の方が仕事も丁寧で味も繊細なので、断然美味しいと思います。

■トランプ大統領が食べたニュースの反響。ハンバーガーの価値向上になれば

2017年11月、トランプ大統領来日の折に、うちのハンバーガーを食していただいて(コルビージャックチーズバーガーなど)、反響が想像以上だったのはたしかです。

これをきっかけに、お客様が増えたこともうれしいですが、それ以上にうれしかったのは、「こだわり(グルメ)ハンバーガーの認知が広がった」ことです。いまでは1000円以上のラーメン店も当たり前にありますが、以前ではあり得なかったですよね。これと同じようなことで、素材やサービスにこだわった美味しいハンバーガーへの認知が高まってもらえそうでうれしいです。

ニュースの影響か、これまでのお客さま層ともまた違う、高齢者の方もお店に来てくださって。先日は、杖をつきながら来店してくださったおじいちゃんもいて。これもうれしかったですね。

これまでのハンバーガーの常識とはまた違う、1000円以上のこだわりハンバーガーが広く一般的に認められるきっかけになったことこそが、うれしいです。

■10坪飲食店開業を目指す方へのアドバイス

あれもこれもじゃなく、自分が好きな食べ物に絞って商売したほうがいいと思います。好きなものであればもっと美味しくしたい、もっといい材料がないかなど、メニューの研究もするでしょうから。

と言っても、僕もそうでしたが、こだわるあまりに、好きなことが好きじゃなくなる瞬間もあったりするもんです。でも結局は、好きなものなら継続できるはずです。この点を、とくに実感しています。

また、読者の方の中には、移動販売をきっかけに実店舗開業をする方もいらっしゃるかと思います。そのような方へのアドバイスとして、「実店舗を開いたら、思い切って移動販売のクルマを売って、実店舗に注力すること」です。この点は、実務的にも、理念的にも、経営面でも、とても苦労したからこそお伝えしたいことがたくさんあるんですが、ここでは内緒にしておきましょう。

 キーワードは「退路を断つ」ことです。

‐柳澤さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

 移動販売で様々なエリアを見てきたからこその立地のこだわりと、圧倒的な“肉&パティ”へのこだわり、とても参考になりました。

 移動販売から実店舗を開業する方がたくさんいらっしゃいます。「10坪不動産」としては、そうした方の店舗運営に向いている物件のご紹介、運営へのアドバイスなどで、飲食業界を応援していきます!

【※取材店舗情報※】

店舗名:MUNCH'S BURGER SHACK(マンチズバーガー シャック)

住所:東京都港区芝2-26-1 i·smartビル1F·2F

電話番号:03-6435-3166

営業時間:

ランチ 11:00 ~ 14:30 L.O. / ディナー 17:30 ~ 20:30 L.O.

土曜 11:00 ~ 20:30 L.O.

日曜·祝日 11:00 ~ 15:30 L.O.

定休日:月曜日

※土·日·祝日は営業時間が変更になる場合あり。月曜日が祝日の場合は営業。翌日火曜日が振替で店休。

※パティが無くなり次第閉店。

<食べログ>

https://tabelog.com/tokyo/A1314/A131401/13121856/

kazuki nishiyama