【千駄ヶ谷の10坪店舗】「街を愛することが大切よ。愛は戻ってくるんだから」 表参道で22年、千駄ヶ谷で17年。喫茶店・スナックを続ける「スウィング」のママ・西田さんに“地元に愛されるお店”をつくる秘訣をインタビュー〈前編〉

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。今回は、表参道で22年、千駄ヶ谷で17年。約40年にわたって10坪飲食店を続け、地元の方たちや常連さんに愛されているスナック「スウィング」のママ・西田さんにお話をうかがいました。

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

今回は、表参道で22年、千駄ヶ谷で17年。約40年にわたって10坪飲食店を続け、地元の方たちや常連さんに愛されているスナック「スウィング」のママ・西田さんにお話をうかがいました。

■スコッチ&ジャズ。「スウィング」という店名の由来

スコッチウイスキーの銘柄に「ジョニーウォーカー・スウィング」っていうのがあるの知ってるかしら。若い人は知らないかもねぇ。どんなに船が揺れても倒れない、だるま型のボトルをしたのが特徴のお酒なのよ。

そのお酒の名前と、ジャズのスウィングが好きだったから、店名は「スウィング」にしたわけ。2つの意味があいまって、いいなって思って決めたのよ。いいでしょ?

 

わたしが、40年前に表参道でお店を始めた頃は、「ジョニーウォーカー・スウィング」も置いていたけど、ジョニーウォーカーの黒と赤が人気になっていた時期だったから、“ジョニ赤”、“ジョニ黒”も置いて。これが、お店の売りだったのよ。その当時にね。常連さんがジョニーウォーカーの大きな看板を、私の誕生日にくれたもんだからお店に飾っていたのね。そしたらある時、ジョニーウォーカーの会長と社長さんがわざわざ店に来てくれて、「お金を出すからその看板を譲ってくれ」なんて言われたこともあったのよ。でもね、お客さまからいただいた品物なのでお断りして、いまでも家で大事に飾っているの。

 

■「おかあさん、世間勉強にもなるからやってみたら?」。子どもたちの後押しで、飲食店開業を決意。



学校を出てすぐに結婚して、子育てをして、働いた経験がなかったもんだから、一度はお給料をもらってみたいなぁという思いがあったのよね。下の子が大学を卒業する40代半ばの頃だったかしらね。でもね、当時はいわゆる事務職を探しても適当な会社がみつからない時代で……。

ちょうどその頃、主人が定年になって、2人で家にいるのももったいないし、退職金の半分をくれるっていうから喫茶店をやってみようっていう話になったのよ。それで、喫茶店でコーヒーの淹れ方なんかも習ってね。

そんなときに、「表参道にいい場所があるからやってみない?」と友達から誘われて、どんな店だろうと家族で見に行ったら、たしかに場所もお店もいいところで。青山通り沿いの6階の物件だったわね。

 

ただ、わたしは社会に出て働いたこともなかったし、お酒も飲んだことなかったし、夜も出歩いたこともなかったから、飲食店の商売は向いていないかもと決めきれずにいて……。

でもね。子どもたちからも「おかあさん、世間勉強にもなるし、きっと楽しいからやってみたら」って、後押しされて飲食店を始めることになったわけ。幸いにね、元のオーナーさんが、従業員を2人残してくれるというし、なんとかなるかもなって思って、始めたのよ。

 

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■ど素人開業。表参道・喫茶店「スウィング」。22年間の思い出

表参道で引き継いだ最初のお店は、内装も直す必要がなくって、権利を頂戴してスタート。結果、22年も続けられることができたのよね。最初のころはそりゃあ、大変だったねぇ。お酒を作ったりする経験もなかったから、手伝いさんにも「邪魔!」なんて怒られてたりして笑。お店を始めて10年後くらいだったかなぁ。一緒にやっていた人のひとりが病気で抜けて、もうひとりも結婚して退職したもんだから、その後は、わたしひとりで必死に切り盛りしたのよ。その後、最後は、お店の入ったビルが解体になるっていうから、お店を閉めることになったわけ。

 

■表参道から千駄ヶ谷へ移転。「街を好きになる」ことの大切さ。

表参道のお店を閉めることになったとき、常連さんに不動産屋のお客さまがいらっしゃって、「ママ、このまま家に閉じこもったら歳をとるだけだよ。健康のためにもお店を続けた方がいい。1、2年待ってくれたらいい物件も紹介するから」って言ってもらえて。

たしかにお店を辞めたら、すぐに病気になってねぇ。ストレスからくる目まいだったのかな。それが、お店をまたやりだしたらメキメキ病気も治ったんだから、不思議なものよねー。そのお店が、いまの千駄ヶ谷のここ。このお店を始めたのが67歳のときなんだから、もう17年。わたしも84歳になったのよね。お客さんの名前もたまに忘れちゃうからいやになっちゃう。でもみんな優しいのよ。

 

最初は、表参道から来たせいか、「千駄ヶ谷“村”」って感じ。夜の8時くらいになると人が歩いていなかったくらいなんだから! 街も暗くて、好きになれなかった。肌に合わなくて、でも、2年だけはやろうって決めて。

やっているうちにわかったこともあって、「街を愛さないと、街のお客さんは来てくれない。街を愛せば、人は集まってきてくれる」ってことに気づいたのよね。

そんな気持ちになれたから、この街で17年も商売ができているんだって思うのよ。

 

‐西田さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

千駄ヶ谷は、10坪不動産の僕たちのオフィスもある街なだけに、愛着があります。西田さんが取材のときにおっしゃっていた、「副都心線ができたり、ビルもたくさんできたりして街の雰囲気も変わってきたわね」っていう言葉にも実感。

さらに、「新宿・渋谷にも近いけど、騒がしくもなくて“挟間の良さ”があるわね」なんて話にも共感です。

西田さんからすると大後輩な僕らですが、千駄ヶ谷を一緒に盛り上げていけたらです!

 

後半編では、40年もの間、商売を継続できている秘訣、これから10坪飲食店を始める方へのアドバイスを、西田さんにお聞きしています。街に愛されるお店を目指す方は必読です!

 

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【※取材店舗情報※】

店舗名:スウィング

住所:〒150-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-3 エグゼクティブ原宿 B1F

営業時間:19:00〜 (ランチ営業あり)

定休日:不定休

電話番号:03-3479-2373

kazuki nishiyama