【千駄ヶ谷の10坪店舗】「お客さまがお店をつくってくれるのよ」。40年もの間、10坪飲食店を続けているからこそわかること。地元に愛されるスナック「スウィング」のママ・西田さんから、名言・格言をいただきました!〈後編〉

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10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

前回に続いて、表参道で22年、千駄ヶ谷で17年もの間、10坪飲食店を続け、地元の皆さんに愛されているスナック「スウィング」のママ・西田さんにお話をうかがいました。


■小さな10坪店舗。「形」にこだわりあり

千駄ヶ谷のいまのお店「スウィング」は、昼はランチも出して、夜はスナックになるのよね。最初、物件を選ぶときに、スナックにするならカラオケがあったほうがいいし、それなら四角い間取りがいいなと思っていたの。同じ小さな10坪でも、奥に長いようなお店だと、お客さまみんなの顔がみえない。四角い形のお店なら、一見さん同士の知らない人も一緒になって仲良く話もできて飲めるし、わたし自身、目が届くからいいなって、ここに決めたの。


■小さな店だからわかること。常連さんの失恋もわかるわ

お客さんひとり一人、みんな性格が違うものよね。おとなしい人や、興奮しやすい人とか……。なので、お客さんのそれぞれを見ながら接し方も考えるようになった。と、言ってもこれも最近のことなのよねぇ。表参道で22年もお店をしていたけど、そのときにはわからなかった……。千駄ヶ谷でお店を始めてからいまにして気づいたことが、たくさんあるんだから。長く商売をしないとわからないことはあるものよね。

いまだと、常連さんのカラオケを聞いているだけで、その日のお客さんの気持ちの起伏がわかる。「あ、悩んでいるのかな。とか、今日はいいことがあったのね」とか、「ひょっとして失恋でもしたのかな?」なんてわかっちゃうだから。


■モットーは、「清く、正しく、“いやらしく”」

わたしのモットーは、「清く、正しく、“いやらしく”」なの。「清く、正しく、美しく」って言葉はよく聞くかもだけど、それじゃあ、おもしろくないでしょ?人間って誰しもずるいところとか、いやらしいところがあるもの。そんなところも隠さずに、あるがままに誠実にやろう、ってことなの。正直にやろうっていうことなのよね。

何にせよ、自分自身が誠実にきちっとしていれば、お客さんもきちっとした人が来てくると言えるわね。長く商売をする秘訣といえば、どんな職業でもそうだと思うけど、商売は誠実でなきゃダメ。これだけは言えると思う。だから、お客さんに迷惑をかけるような若い子には出入り禁止を申し渡すことだってあります!教えなくてはいけないルールも教えます!でもね、その子のことを思って言っているから、これがまたお店に戻ってきてくれるのよ。そんなときは、うれしいよね。

なんて言いつつ、いつも「あんなこと言ってよかったのかな」って、毎日、反省ばかり。家に帰る車の中で、さだまさしの歌を聴きながら今日の一日を反省しているんだから。

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■長年、飲食店をやってきて、うれしかったことって?

表参道のお店の頃と同じ看板を、千駄ヶ谷に移ってからも使っていたのね。そうしたら7、8年経った頃かしら……、ひとりの女性がたまたま看板を見つけて入ってきたことがあったのよ。「やっぱり、ママだった!」なんて抱きついてきてくれて。先月も偶然、看板を見つけたといって、25年ぶりに訪ねて来てくれた男の方がいた。「覚えてますかー」なんてね。お店を続けていて、本当によかった。歳をとるのも悪くないわね笑。

家にいたら家族、親戚だけに会うくらいだろうけど、お店をしていると大勢の人と出会えるから本当によかった。

これまで、何万人のお客さんと接して思うのは、世の中に悪い人はいないってこと。いまだって、お客さんがわたしのことを大事にしてくれるし、わたしだってお客さんを我が子のように、孫のように思いながら愉しんで人生を送らせてもらっているんだから。

人生に思い残すことないわねぇ。お店ってお客さんがつくってくれるもの。本当にありがたいと思っています。


■これから、10坪飲食店を始めたいと思う人に一言

スナックは若い人には向かないし、もしいま若い人がやりたいなら、「もったいない!」と言いましょう。

スナックっていうのは、からだよりも「心」を使う商売だと思うから、50、60歳の人生経験を積んだ人が始めた方がいいと思うのよね。若い人はからだを動かす仕事をしないと!あとは、何をするにもオーナーになって他人にやらせるのではなくって、本人も現場に立つこと。じゃないと、長続きはしないと思うわね。他人にやらせているんじゃあ、いろんな問題も起きるもんだし。飲食店の商売の醍醐味もわからないでしょ。


‐西田さん、取材のご協力、ありがとうございました!

西田ママのお人柄でお客さんが集まるんだろうなっていうこと、とてもわかります。「人間力」というと簡単ですが、その境地にいくには人生経験が必要なのかもですね。

一方、ママがお客さんから元気をもらえるという話(前編)もあり、飲食店経営って、やっぱりいいものですよね。

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【※取材店舗情報※】

店舗名:スウィング

住所:〒150-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-3 エグゼクティブ原宿 B1F

営業時間:19:00〜 (ランチ営業あり)

定休日:不定休

電話番号:03-3479-2373

kazuki nishiyama