【千駄ヶ谷の10坪店舗(路面店)】「3坪の奇跡」と呼ばれ、千駄ヶ谷のソウルドリンクになっている紅茶専門店「モンマスティー」のオーナー・柏井さんにインタビュー!〈前編〉

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

今回は、外資系たばこ会社に18年間勤めた後、2004年、東京・千駄ヶ谷に3坪の紅茶専門店「モンマスティー」を開業した柏井さんにお話をうかがいました。

■ロンドンの小さなコーヒーショップが店名のきっかけ

元々はプロのミュージシャンを目指していたんだけど、見切りをつけて就職したのが、フィリップ・モリス。外資系のタバコ会社だよね。18年間お世話になったんだけど、上司と喧嘩して、衝動的に会社を辞めた。ちょうどリストラ勧告の噂もあって、あと2週間待てば2000万円の退職金がもらえたんだけど、待っていられないから手元に残ったのは、200万円。

もったいないように思えるけど、いま思えば独立するときにゼロからの出発でむしろ良かったと思ってるんだよね。もし2000万円もらってスタートしていたら、甘えも出て、いまの商売は成功しなかったと思うな。

バンドマンをしていたときに、渋谷にある紅茶店でアルバイトをしていたことがあって、そこの味を気に入っていたんだよね。それで、失業中に富士山行きを誘われたとき、もし頂上まで登れたら紅茶の店をはじめよう。ダメなら再就職先に決まっていた富山の薬屋に就職するって決めて登ったら、登頂しちゃって。

富士山の山頂に立ったときに、開業の決心もだけど、紅茶といえばやっぱりロンドンだろうと思って、すぐにロンドンに飛んで、そしてニューヨーク、ロサンゼルスと旅をしたの。

ロンドンでいろいろ見てまわって、最後に入ったのが、“モンマスコーヒー”って店で。「英語もろくにしゃべれない俺に、小さなサンプルを出してくれて、これを飲んで待っていてください」と親切にしてくれて。店のロゴの感じもよかったから、俺の店の名前も“モンマス”にしようと決めた。

結局、店名を探す旅だけで、50万円かかったんだよ笑。

■「キオスク」を真似た? 小さな物件探し

バンドマンのころに渋谷の紅茶店でアルバイトしていたときの話。

店長も経験して、朝になっても従業員が来なかったりっていうのは日常茶飯事。人を使うっていうのは難しいものだなと思っていたから、まずは、一人でもできる店のサイズでやろうと考えた。そのサイズが3坪なんだよね。

あと、フィリップ・モリスで会社員をしてたころに担当していたキオスクで働いているおばちゃんたちが本当にいい仕事をしていたんだよね。熟練したおばちゃんともなるとお客さんの顔をみなくても手をみたら注文がわかるし、一日中、キオスクの様子を観察していた日もあったくらい、プロの仕事を教えてもらったよ。

そんな風にキオスクとか、たこ焼き屋とかタイ焼き屋のイメージ。小さい店で丁寧に、楽しそうに仕事している姿をヒントにしたわけ。

それで早速、3坪というサイズにこだわって物件を探したけど、ほとんどの不動産屋さんに相手にされなかった。いまの場所・千駄ヶ谷は大手不動産会社の女性が勧めてくれた場所で、俺はこの街のことをまったく知らなかったくらいだし。紆余曲折を経て、探し出してここに決まるまでに9か月かかったかな。

■街に愛される、小さな紅茶専門店運営の秘訣

開業からいままで、渋谷のケニヤンという紅茶店に学んでます。起業するときにもお伺いをたてて、紅茶の入れ方、茶葉の問屋や卸、そしてお店の運営方針も教えてもらって。開業当時の俺は、紅茶の入れ方くらいしか分からなかったし、開業してからも15年間、みんなで考えながら続けてきたという感じかな。

紅茶の入れ方にしろ、マフィンの作り方にしろ、基本的な要領はあるけど、俺らの店にはマニュアルってものがない。スタッフ一人一人が試行錯誤しながら、自分で研究する。俺からの指示もなければ、店長からの指示とか、誰かの許可をもらうとかも一切なく、一人一人が納得するように勝手にやらせています。

店で考えたメニューをさらによくしようと、自宅で試作品をつくってくる子もいるし。裁量もあるし、自由もあれば、商品は常に進化していくし、いい店になっていくんじゃないかな。

■スタッフ集めは、スカウトとフィーリング

いま俺らの店には8人のスタッフがいて、基本的にはスカウトで集まったメンバーです。

俺が気に入った子がいれば、「とりあえず、試しに明日7時に来いよ」なんて言うと本当に来てくれて、来たら来たで「一緒に働くつもりがあるなら、来年には一人辞めるし、本気で働くか?」なんて具合に、人が集まっているんだよね。向こうの連絡先も聞かないで一方的に誘うんだけど、本当に来るんですよ。

俺が声をかける決め手は、フィーリングだけ。

たまに外れるけど、なんとなくこの子はいいなと思えば、様子やタイミングを見はからって2年がかりで口説いたこともあったな。

いまでは店頭でいきなり「働かせてくれ」と言ってくる子もいれば、なかには「時給300円でもいいから働きたい」と言ってくれる子もいて、もちろん時給300円なんてありえないから、それなりの時給にして働いてもらったけど、そんなファンになってくれる子がいるのはうれしいよね。彼女は上京して1年目で寂しいところ、うちの店が癒しになったって言ってくれたんだよね。

いまでは、ホームページのアルバイト募集を見てくる子もいるけど、名前の字面とかメールの文章でビビッときて採用したり。ちょっとそのへんは、みなさんの参考にならないかもね。でも、お店の価値観とか雰囲気がわかる人には、共感してくれる人が自然と集まってくるんだと思うんだよね。

‐柏井さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

10坪も小さいですが、さらに小さな3坪にこだわった点、独特なお店づくりと人集めが参考になりました。確固たる価値観をつらぬくお店には、宣伝なんてなくても熱狂的なファンが集まるんですね。

【※取材店舗情報※】

店舗名:モンマスティー千駄ヶ谷店

住所:〒150-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷1-21-2

営業時間:月~日曜日  7:00~24:00

定休日:無休

電話番号:03-3478-2357

お店のHP:http://www.monmouth.jp/index.html

<食べログ>

https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130901/13037238/

kazuki nishiyama