【外苑前の10坪店舗(空中階)】雑誌編集者から転身。理想の街に理想の店をつくった、「BARトースト」オーナー・佐伯さんにインタビュー!〈前編〉

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

今回は、バーの店主になる夢を叶えた「BARトースト」の佐伯さんにお話を伺いました。

■編集者時代。みなに勧められた飲食店経営

社会人としてのキャリアのはじめはメーカーでの営業。その後、メディアにたずさわってみたいという気持ちが芽生えて雑誌の編集者に転身。そしてさらに転身して、いまはバーの店主です。

編集者のころは、取材で人の話を聞くことが好きでとても充実した仕事をしていました。でも、人の話を聞く以上に自分も話がしたくて仕方なかったんですよね。取材のあと、特別に時間をいただいてインタビューした方とおしゃべりすることがしょっちょうでした。ちょっと変わった編集者だったかもしれません笑。

編集者3年目のころ、当時の編集長と飲んでいるとき「もし僕が佐伯くんだったらバーをやるのになぁ」と言われたんです。また、取材を通じて仲良くなった飲食店経営者の方々に「佐伯くん、バーをやればいいのに」と言われるようになったんです。

はじめはびっくりしました。でも、漠然とですが、リタイア後に飲食店をやってみたいという気持ちがあったのはたしかで。そんな話の積み重ねもあり、想いが本気になりました。そして、30歳で夢を持ちました。「バーのマスターになろう」と。根拠や自信なんてなかった。でも、「あ、これだ」と思った瞬間でした。

こだわった物件選び。譲れなかった5つの条件

バーをやりたいと思ったのはいまから約10年前ですが、本格的に物件を探し始めたのは、オープン(2017年4月)の約2年半前。そのとき、僕には譲れない条件が5つありました。


①大通りから一本入ったところ

②その大通りにはタクシーがたくさん走っていること

③3、4階建ての雑居ビル

④できれば最上階の角部屋で、エレベーターはなし

⑤大きな窓があること


この条件を不動産屋に伝えると、話の途中から「まず無理ですね。条件を3つほど減らしたほうがいいです」とか「本気で商売する気、あります?」とか、とにかくまともに話を聞いてもらえない状況が続きました。たしかに不動産屋からすれば飲食店としてはとても変わった条件です。でも「(適当に)この店でいいや」でなく「あの店に行こう」と意志を持って来てもらえるような、知ってる人が集まる隠れ家的な物件を探していました。

一年半で5軒の不動産屋をまわりましたがコレといった出会いはなく、正直疲れ果てていました。友人・知人に「物件見つかった?」と会うたびに聞かれるのもしんどくて…。そこで、ひとりで悩むよりまわりの人の知恵を借りようと考えたんです。

ちょうどバーを始めたいと思った30歳のころから「これから10年かけて、“和食はここ” “フレンチはここ” “お鮨はここ”“バーはここ” というふうに、一生付き合える店を見つけよう」と思い、いろんな店に通っていました。

そこで出会ったオーナーたちに「実はバーを開きたいんですが、物件探しに困っていて」と相談したんです。

すると、ある有名フレンチのシェフが「じゃあ、ここに連絡してみて、僕の名前をだしていいから」と。早速連絡してみると、これまでと全く対応が違う! ほんの2、3週間のうちに理想的な物件を紹介してもらうことができました。しかも、第一希望だった神宮前3丁目です。このあたりは20代の頃から自転車で通っていたエリアで、ちょっと高台で風通しが良く、気持ちのいい街だなと思っていました。親友にも、10年以上前から「いつかもしバーを開くことができたら、この街がいいな」と話していたぐらいです。

普通は、立地と客層をしっかり下調べして出店場所を決めるものかもしれません。でも僕は、この街が好きだし、ここの空気が好き。ここでお店を開きたい。それだけの理由で決めました。

みんなの顔が見れて、みんなに笑って帰ってもらえるBARに

一般的に「BAR」って、現実から距離をおくことが良しとされる業態ですから、「窓」と「時計」はないほうがいいと言われています。でも僕は、お客さんと一緒に雨や雪が降り出したり、綺麗な月が見えたりするのを分かち合いたかったので、大きな窓のある物件を探しました。

物件選びもですが、内装も飲食店のセオリーからすると、外れているかもしれません。

造作は基本的にはカウンターをつくっただけ。あとはアンティークの家具を置き、カウンターの余った木で棚を造りました。なので、そんなに費用はかかっていません。初期費用は不動産との契約も含めて全部で800万円ほどですね。

こだわった点は、自分がカウンターに立ったときに店全体が見渡せること。カウンターを「への字」にして、僕が中心に立つことで全員の顔が見える、全員と話せることを大切にしました。

カウンターの高さは、「身長174センチの人」が椅子に座ったとき、僕とちょうど目線が合うよう設計。幅も、お客さんがお酒をこぼしたとき端まで拭けるよう、自分の手が届く範囲にしました。

席数にもこだわりました。ゆったり座ってほしいから椅子の数はかなり少なめ。飲食店経営者から勿体無いと言われることもありますが、このぐらいがちょうど良い。それに、経営が大変になったとき、自分一人でなんとかまわせるキャパがいいなと考えたんです。店の空気も作りやすいですしね。10坪不動産を検討されている店であれば、オーナーやスタッフさんが雰囲気をコントロールできるぐらいの規模がいいですよね。

店の経営に関して大切にしていることがあります。それは、常連さんも、初めてのお客さんも「BARトースト」に来たら、必ず一度は笑って帰ってもらうこと。これが、僕の使命かな。

‐佐伯さん、取材のご協力、ありがとうございました! 

「こんな場所で、こんな内装で……」というお決まりのセオリーではなく、「僕はこの場所でBARをやる」と決めたご自身の価値観や直感を信じて、立地・物件・内装を選んだ点こそが、とても大切なことではないかと気づかされました。

後編では、BARなのになんで「トースト」なの?というお話や、これから10坪飲食店開業を目指す方へのメッセージをお伝えします。

【※取材店舗情報※】

店舗名:BARトースト

住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-42-11ローザビアンカ305

営業時間:月~土曜日  20:00~4:00

定休日:日曜日

電話番号:03-6206-4209

kazuki nishiyama