【ラーメン界レジェンドの10坪店舗】たった8年で企業価値を500倍にした「つけめんTETSU」創業者、 そして、「あの小宮」の張本人・小宮一哲さんに取材!

小宮さん.jpg

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く、「10坪ストーリー」。

今回は、ラーメンドリームをつかんだ男として知られる、「つけめんTETSU」創業者、そして話題のラーメン店「あの小宮」をプロデュース、国内のみならず海外にもラーメン文化を広めている小宮一哲さんにお話を伺いました。連載でお届けします!

-遠まわりした10代。人生を取り戻すため、社長になると決めた

中学時代は勉強もできて、腕っぷしも強く、自分でいうのもなんですが、目立っていた存在だったんです笑。でも、早々に挫折が訪れまして。高校受験に失敗し、入学した高校も3日で中退、ふらふらする時期もあったり、ワーキングホリデーに行って、大検を受けてと、世間一般のルートからすると、かなり回り道をしてから大学に入りました。なので、大学入学時には同級生より3つ年上。それだと、なかなか周囲に馴染めませんよね。そんなわけで、サークルに入ることもなく、勉強とアルバイトに精を出す極めてマジメな大学生活を送りました。

学生時代はパソコンショップでアルバイトをして、接客や商品知識を勉強しながら自分なりに工夫してみると、これが、想像以上に売れたんです。そのとき、「僕には商売の才能があるかもしれない。商売なら自分はきっと誰よりもうまくやれる」と、アルバイトを通じて、自分の強みがわかったことは、大きな収穫でした。一度挫折して遠回りしているだけに、同級生たちと同じ道を歩んでも仕方ない。そんな気持ちもありました。

「やっぱり、小宮だな」と、中学生のときのような輝きを取り戻すためにも、「自分で商売をして、社長になる」と決めたのが、就職活動を目前とするときだったですね。

-まずは、「商売人になる」

社長になると決心しても、まだそのとき、これといった事業は思い描いていませんでした。ワーキングホリデーでの経験や大学の専攻から、英語を極めて何かしたいとぼんやり思っていましたが、突き詰めて考えていくうちに、自分にはそれよりも何倍も好きで得意なものがあることに気づきます。

それが、「ラーメン」だったんです。

当時からいろいろな店に通い、これという店の味を再現したりと、おいしいラーメンを作れる自信もありました。

とはいえ、卒業していきなりラーメン店を始めようとは思いませんでした。まずは数年、企業で働き、「経営」を学びたかった。というのも、おいしいラーメン店は世の中にごまんとある。必要なことはおいしいラーメンを作るだけではなく、経営のノウハウを知ることではないかと思ったんです。 

そして新卒で働いたのが、ユニクロ(ファーストリテイリング)です。

就職活動時、ユニクロの採用コピーだったのが、「商売人を育てる」というもの。将来、ラーメン店の社長になる僕の目的にぴったり合致していました。

採用面接で、若気の至りなんですが、けっこう大胆なことを言ったことも覚えています。「1年目は会社に食わせてもらいます。ですが、2年目からは、僕が会社を食べさせます」って笑。この言葉が採用の決め手になったかはどうかわかりませんが、縁あって内定をいただくことになりました。

-ユニクロで味わった商売の醍醐味

入社してからは誰よりも早く出社して、いちばん最後まで働く毎日。同期よりも3歳年上ということで人間関係に悩んだりした時期もありましたが、人一倍努力して、気づけば約200人いた同期のうち、ナンバーワンの給料になっていました。(これは単純に仕事が遅く、残業が多かったからなんですけど笑)ユニクロでは、掃除のやり方ひとつから教わり、「できる準備はすべてやっておく」という商売人の基本姿勢や、仲間や部下との人間関係づくり、ムダのない店舗運営・人員配置など、多くのことを学びました。これが、いまのラーメン店の運営、会社経営に活きているのは間違いありません。世間にはユニクロのことを悪く書く記事もありますが、僕にとってのユニクロは最高の環境。商売の醍醐味は味わえたし、結果を出せば報われる。仕事が楽しくて、いっそ、起業しないでこのまま働き続けてもいいかなと思っていたくらいです。

そんなある日、店長に抜擢するとの辞令が下ります。

会社に認められたと素直にうれしかったのですが、店長というのは責任ある立場なので、引き受けてしまったらそう簡単に辞められなくなってしまいます。もし本気でラーメン店を起業するなら、このタイミングしかない。そうして自分に決断を迫った結果、僕が出した結論は、やはり「起業」でした。

それに会社が僕に店長を任せるということは、店舗運営ができるだけの能力があると認めてもらったと都合よく解釈したんです笑。そして、辞令を断り、辞表を出しました。

-飲食業界経験なしの怖い者知らずだから、突っ走れた

僕が2005年に、初めて開業したとき、手持ち資金は500万円でした。借入はなく自己資金で勝負。予算は限られていたので、内装も一部、自分でペンキを塗ったりしましたね。

東京・千駄木で居抜き物件を見つけて、8坪9席からスタート。

僕が無類のラーメン好きとお伝えしましたが、ラーメン店はおろか飲食店で働いた経験すらなし。いま思えば、無知だったからこそ、怖いもの知らずで突っ走ってこれたのかもしれません。数十店舗の経営を経験したいまなら、さまざまなトラブルもリスクも想定できるので、踏み切れないところがあったかもしれない。我ながらよくやったなと思います。

小宮①.jpg

-なにより最初に苦労したのは、「物件探し」

起業・開業して、まず最初に苦労したのは、物件探しです。

当然、理想は駅近や人通りの多い立地に店を出したかったんですが、物件情報をどう手にすればいいのかすらもわからなかったですし、予算もかぎられている。「これという物件」があったとしても、保証金や賃料が高く、自己資金では賄いきれず、あきらめる物件もありました。これから開業するという方も、このときの僕と同じような悩みが出てくると思います。

僕の場合は、かれこれ50件も見たこところで、ようやく見つけたのが、「東京・千駄木。8坪・9席」の物件だったんです。ここに決めた理由をお伝えします。

-物件選びでこだわったこと

僕がとくにこだわっていたのが、「●●通り」という、通り沿いに出店できるかどうか。

当時はインターネットもそれほど普及しておらず、僕もひとりのラーメンフリークとしてラーメン雑誌を買っては地図を見つつ、お店にたどりつくという時代でした。それだけに地図にわかりやすく「●●通り」とある物件を探したんです。「通り」を目印にお客さんがお店を見つけやすい物件にこだわりました。

そして結果、東京・千駄木にある「不忍通り」に面した8坪・9坪の居抜き物件を選びました。最寄りとはいえ、西日暮里駅や千駄木駅双方からも、徒歩約10分はかかる物件でした。駅近でもないですし、また、居抜きということは、前の店がうまくいかず撤退しているということもあるので不安に感じなかったといえば嘘になります。

けれども、斜め向かいに行列のできるラーメン店があったんですね。それを見て、

「この立地には、お客様がいる」と、判断。あとはおいしくて、魅力的なお店をつくればいいんだと決断しました。

-いま考える、「立地」選びの基準

「つけめんTETSU」、そして「あの小宮」も含め、何十店舗も立ち上げているので、それなりに開業する際の立地の判断基準があるのは確かです。と、言ってもあくまで仮説かもしれませんが、ひとつお伝えできる“法則”をお伝えします。

僕が最初に開業したのが2005年でした。

いまでは、スマホも普及して検索して訪れる方もいれば、いまだ雑誌をもとに調べてきてくれるラーメンファンなど、さまざまです。よく「話題となる店なら、お客さんがネットで検索して訪れてくれるから立地は関係ない」という話もありますが、僕の考えはちょっと違います。

ラーメン店の経営者視点からすると、当然、立地が重要です。たとえば、「中華そば あの小宮」「豚骨麺 あの小宮」はともに、東急東横線・都立大学駅から歩いて2分の場所にあります。「あの小宮」をプロデュースする際に、僕が後輩たちにアドバイスしたのは、「駅の改札から歩いて最初に出会うラーメン店にしよう」の一点でした。もう少し詳しくお伝えすると、駅の乗降客数から、来店客数の概算を計算することもできます。店舗に訪れるお客さんの数をデータ化して、なんとなく売上の見込みを立てることもできます。これは、これまでに2、30店舗運営しているから、肌感覚も含め、わかることです。

もし、これからはじめて「10坪飲食店開業」をするなら、なかなかこんな駅近・良物件に巡り合えないかもしれない。だとしても、足で物件を探してみることが大切です。いまも僕は「足」で物件を集めることを続けています。街歩きしながら、ここにはお客さんがいそうだとか、テナント募集の物件をみると電話してみたり。これって、商売人としての習慣なのかもしれません。

‐前編。小宮さんの起業前夜と起業後の苦労、立地に対する考え方をお聞きしました。

無類のラーメン好きはたくさんいますが、若くして「経営」に着目した点が、小宮さんが「いちラーメン店店主」で終わることなく、「ラーメン店経営者」となれた分岐点だったのかもしれません。次回記事では、小宮さんが考える「経営」についてお話を伺います。

あの小宮②.jpg

【※取材店舗情報※】

店舗名:中華そば あの小宮 都立大学店

住所:〒152-0031 東京都目黒区中根1-5-1

営業時間:11:30~27:00

定休日:無休

電話番号:03-5726-9115

その他店舗(大崎店)

店舗名:豚骨麺 あの小宮 都立大学店

住所:〒152-0031 東京都目黒区中根1-5-1

営業時間:11:30~27:00

定休日:無休

電話番号:03-5726-9115

その他店舗(上海店)


Shota Fujii