【ラーメン界レジェンドの10坪店舗】 お客さまも、従業員も、 幸せにするために必要な経営努力とは

10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。前回に引き続き、小宮一哲さんに連続インタビュー。今回は、いちラーメン店を繁盛させるだけではなく、「ラーメン店」の会社経営をし、飛躍するための視点をお聞きしました。

スクリーンショット 2018-10-01 18.56.19.png

-ホームランより、バントヒットが重要

資本金300万円で起業、8年後に15億円で「つけめんTETSU」を売却したことをもって成功だとか、ラーメンドリームとよく言われるんですが、僕からすると「たんに、運がよかっただけ」です。もちろん、「時間と汗」を人一倍かけたのは当然です。でもそんな方たちは、世の中にごまんといますよね。僕は、やろうと決めて邁進したことが、たまたまホームランになっただけです。なので、またそれを狙いにいっても三振になるかもしれないし、いまはしっかりバントヒットができるかどうか、コツコツ事業を進めていけるかどうかの視点でビジネスをしています。川相ってわかりますか笑?(プロ野球・巨人の川相昌弘(通算バント(犠打)533犠打の世界記録保持者)。僕らが行っていることはビジネスなので、まずは、野球のバントのように、コツコツ商売を進展・継続させて、関わる仲間の生活を成り立たせていくことが大切です。

-「つけめんTETSU」を拡大させた、ひとつの理由

とはいえ、僕がお店を拡大できた理由のひとつをあえていうなら、セントラルキッチンをつくったこと。ラーメン店をやるうえで大切なことのひとつが、スープづくりです。これを、各店舗のスタッフそれぞれに教えるのは至難の業なんです。なので、僕は数店舗に増えたタイミングで、セントラルキッチンを設けました。それもあって、ガス容量が足りないようなテナントですとか、立地や設備に難のある場所でも新店舗を続々とつくることが可能になりました。

-上海で、ホームランを狙う!

さきほど、企業経営のためなら、ホームランより、バントヒットが大切だとお伝えしましたが、ホームランも狙わないと、僕も一緒に仕事している仲間たちにも夢がないな、ワクワクしないなと、冒険したのが「豚骨麺 あの小宮 上海店」のチャレンジです。2017年11月、上海に「あの小宮」を初出店。日本式豚骨ラーメンを、僕たちなりにアレンジし、これからさらに世界に広めようと試みています。上海ではラーメン1杯を日本円にして600円で売っているのですが、一方、ローカルの麺料理の相場は約200円。やや高級と受け止められているかもしれませんが、そんな市場のなかでも選んでもらえるような、味づくりや店づくりに知恵を絞っています。

-値付けの葛藤。でも選ばれないなら、仕方ないよね

上海の例だけでなく、「あの小宮」など、日本国内での店舗運営・会社経営でも、値付けというのは常に考え工夫しているところです。値付けというのは、これから飲食店を開業する方にとっても、ずっとつきまとう課題だと思います。個人経営でなんとかラーメン店を切り盛りするなら、従業員も社会保険にも入らず、国民保険でよいかもしれない。でも、もし、ラーメン店を生業にして、しっかり会社を経営したいと思うなら、当然、従業員に給料もしっかり払うべきですし、福利厚生も整えないとなりません。とはいえ、人件費や材料費、運送費だとかの経費がかかる。そのとき、ラーメン1杯をいくらで、お客さまに提供するか。ここは経営者としての腕のみせどころです。従業員の人生のことを考えれば、市場価格より高くそれなりの値段で提供するほかないですし、対してそれに見合う味、サービスを提供する義務もあります。あまりに顧客目線で低価格にしてしまうと、一緒に働く仲間たちを疲弊させてしまう。その点の「値付け」はとても意識しています。仮に多少高いと思われる価格で、僕らの「一杯」がお客さまに受け入れてもらえないなら、「それならそれまでのものだった。仕方ないよね」という、覚悟を持って経営をしています。

スクリーンショット 2018-10-01 18.26.56.png

-求人情報の原稿は、経営者こそ書かないと!

「つけめんTETSU」を経営しているときは、10店舗くらいまでは、求人誌に出さなくても人づてや、お店の知名度で人が集まってきました。店舗数が増えたそれ以降は、求人誌やネットを活用しましたね。ラーメン業界にかぎらず、飲食業界はどこも同じかもしれないですが、人が足りないですから面接に来てくれたらだいたい採用(笑)。僕が不採用としたのは、面接のときに飲みかけの缶コーヒーを持って現れた人だけですね。店舗が拡大し、会社の規模が大きくなれば、求人誌や人材会社の方からの提案営業が増えると思います。持論ですが、そんなときに人材会社さんに、自分たちの会社の採用に対する文言づくりを一任しないことです。だって、自分たちのお店や会社を一番知っているのは、自分たちでしょう。僕たちのお店や会社のことは、僕たちが伝える。

-人手不足はチャンス。アイデアひとつで悩みは解消できる

飲食業界は、面接に来た方はたいてい採用するということもあって、入りも多ければ、離職も多い業界です。その常態に悩む経営者の方も多いと思います。また、一緒に働くだけに、みんなに夢をみてもらいたいし、それを叶える手助けもしたい。それだけに従業員の離職というのはショックです。経営者としての力不足も感じる瞬間であって、人に対する経営者の悩みは尽きません。僕がいまひとつ、実践していることがあります(これはあまり言いたくなかったことですが、10坪ストーリー読者にだけこっそり教えます笑)。

 「人手不足を経営者だけの悩みにせず、会社みんなの悩みにする」

この考えを会社に浸透させることです。小さいお店や会社ほど、人材難は店長や社長だけの悩み。それをスタッフみんなの悩みにするんです。「人がいないなあ」と嘆いているなら、「じゃあ、キミの仲間や分身を連れてきてよ」と。「あの小宮」では、その好循環が生まれています。

-仕事は山登りでなく、山づくりという発想

これまでも「プロフェッショナル社員になる」「時短でも自由に働ける」など、僕もいろんな雇用体系を考えてきました。その取り組みは、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)にも取材されました。こうした雇用体系だけでなく、いまは、働くみんなへのマインドの転換もはかっています。よく会社に入って出世することは、山登りに例えられます。上司や会社に認められて、ときにライバルを蹴落として……なんていう出世競争です。でも、僕は創業者なので、発想が逆なんです。自分の下に、仲間や応援してくれる人を積み上げて、山をつくっている。こんな発想を、従業員に伝えたい。仮にキミが偉くなりたいなら、山を登るのでなく、下に下に土を盛って、キミの山を高くしていけばいいじゃん、という考え方。その発想を具体的に実践するために、「あの小宮」では、従業員が自分の分身として、また仲間として連れてきた人材の試用期間の雇用契約を個人間で結んでもらっています。連れてきた従業員の夢に巻き込ませているわけですから責任をもってもらいたいし、人を雇う感覚を従業員にも持たせたい。もちろん、経済的な負担はなく、精神的なものです。そして、長く働きたいと思ってもらえるなら、3か月後に会社と雇用契約を結ぶ。 

この話、あまり言いたくなかったんですけど笑。

106842_dokan-yama41-01.jpg

-10坪で始める開業、そのときが最強かもしれない

ラーメン店しかり、飲食業を最初に始めるには、10坪というのはちょうどいいかもしれないですね。もっと小さくてもいいくらいです。「あの小宮」は、東京・都立大学という立地で、「5坪・5坪」の2店舗を、元部下たちが店主となり経営をしています。5~10坪なら、最悪、ひとりでもお店を回せますし、もちろん大変なことも多いですが、ある意味で、これって“最強”とも思えます。というのも、お店が成功していって、会社にもなれば、多くの従業員やその家族の生活を考え、企業規模の拡大も周りから期待されます。そうなったとき、経営者のジレンマが生まれるもんなんです。本当は「お客さまにとっての満足」を一番に考えるお店がベストなんですが、従業員のことが一番の気がかりになるんですよね。これから開業する方を前にして言うのもなんですが、大きくなっていくときに、経営者としての壁や悩みが増えることは先にお伝えしておきます。

会社としても経営者としても成長したいなら、その覚悟をしておくことです。でも、人材面に関しては、経営者だけの悩みにせず、会社の悩みにしてみるといいということは前回の記事でもお伝えしました。仲間と一緒になって、夢を叶えていってもらいたいです。

-200万円で人生が変わるならチャレンジしていい

「10坪インタビュー」の方からお聞きしましたが、200万円を握りしめて開業したい!と相談に来た方もいたとか。これって、すごい勇気だなと思います。でも、もし人生を「180度」変えたいなら、チャレンジしてみていいと思います。というのも、僕もいまでこそラーメン界でそれなりに名前が通っていますが、若いころは、オープン前にパチンコ屋に並ぶような人間でしたし笑。でも、自分で商売を始めて、会社もやるようになったら、ギャンブルなんてやらなくなりました。それは、会社経営のほうが圧倒的にワクワクするからです。同じ200万円が手元になるなら、自分自身に投資してギャンブルしてみることです。自分に賭けてみる。人生が変わるはずです。

-これから「10坪」飲食店開業をする方へのアドバイスは?

ひとつは、ネットの反応は気にしないこと。いいコメントはうれしいですが、嫌な内容も多いものです笑。いろんな意見を目にしたり、耳にすることもあるかもですが、自分の意思を大切にして欲しいですね。だって、リスクを背負って勝負しているのはあなただろうし。一方で、自分を信じて勝負して商売がうまくいかないなら、センスがなかっただけという意識も持ってほしいですね。決して、世間やお客さん、ましては従業員のせいではありません。

「あの小宮」でいうと、出前のアイデアでしょうか。たった、20メートル隣の店ですが、スタッフにヘルメットを被らせて、(つり銭バックに中身ないけど身に着けてもらって)、出前してもらうとか、そんな試みはしています。おもしろいから、つい注文したくなりますよね。これは一例ですが、これからの飲食店は、「おいしいだけでは売れない。売れるものは人に見せたくなるもの。連れていきたくなるもの」という視点がないと生き残れないはずです。世の中が求めている企画や味などを形にする。一方で、世の中とは逆の施策というか、「このアイデアはおもしろいね」という企画を行っていくという、マーケティング感覚は重要かもしれないですね。

スクリーンショット 2018-10-01 18.32.46.png

-最後に、小宮さんのこれからの展望を教えてください。

「あの小宮」の店舗展開などへの協力は当然、それに加えて、これからイタリアン料理店の店舗展開を支援します。2018年9月には、皆さんを驚かせることができるはずです。40歳を節目に一度、「つけめんTETSU」を成長させて、会社を売却。またこれから「1年生」の気分で、携わるお店を成長させて、50歳で完全引退を目指しています。僕は飽きっぽいので、10年単位でしか人生を生きられないんです笑。でも、自分なりに解釈すると、期限や目標を決めてチャレンジしないと、いつまで経ってもゴールがないわけですし、やっててつらいですよね。マラソンも、42.195キロとわかっているから、ランナーも必死に走れるわけですから。みなさんも期限を決めて、10坪飲食店へチャレンジしてみてください。

「いつまでに●店舗にするぞ」と、期限を決めて逆算していくと、今日することが明確になるはずです。

‐連載後編。ありがとうございました!今回は、これから飲食業を行う方へのアドバイス、エールをお届けしました。企業・開業はゴールでなく、それからの展開へのスタート。期限を決めて実践するためのヒントを得られました。僕たち「10坪不動産」も、みなさんと一緒に飲食業界を盛り上げていけたらと思います。


スクリーンショット 2018-10-01 18.29.13.png

【※取材店舗情報※】

店舗名:中華そば あの小宮 都立大学店

住所:〒152-0031 東京都目黒区中根1-5-1

営業時間:11:30~27:00

定休日:無休

電話番号:03-5726-9115

その他店舗(大崎店)

店舗名:豚骨麺 あの小宮 都立大学店

住所:〒152-0031 東京都目黒区中根1-5-1

営業時間:11:30~27:00

定休日:無休

電話番号:03-5726-9115

その他店舗(上海店)

中城 真介