【南青山の10坪店舗】 つぶれるかも⁉からのミシュラン星、獲得! 負けサイクルを打破したお店の工夫とは? いち太の佐藤さんに取材。

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10坪の可能性を信じ、挑戦している方のお話を聞く「10坪ストーリー」。

今回は、2014年、南青山に日本料理・懐石店「いち太」を開業。開店後わずか1年でミシュランガイドにも掲載された、佐藤さんにお話を伺いました。

 

-飲食業界に入ったきっかけを教えてください!

僕は北海道出身です。最初、中華の料理人になりたくて札幌の専門学校に通い、学生のころから某高級ホテルでバイトして、そのまま新卒で就職しました。

当時の業界は、年功序列で定年まで勤めるのが当たり前。高級ホテルの中華料理店ということもあり、とても華やかな世界でした。

2年半くらい休みもほとんどなく夢中で働いて、ふと疑問に思ったことが2つありました。10年以上の先輩をみると当時の僕と同じような仕事をしているし、鍋は振れても魚を下せない方もなかにはいました。また、飲食業界にありがちですが、“休みない自慢”をする先輩方も多く、このままでいいのだろうかと悩んでしまって、次に何をするか決めないまま退職したんです。

 

-留学で気づいた和食の魅力

父親の勧めもあって、ニュージーランドに留学しました。

北海道の田舎に育って、小さなコミュニティのなかで粋がっていたのかなと思ったり、自分のキャラクター含め、このままでいいのかなと自分のことを知ることができた時間でした。

また、留学先の食事で、日本食のよさにも気づくことができました。フードコートで食事をしても、日本食ほど丁寧に仕事をしているところはないなと。

そんなこともあって、いつか自分の店を持ったときには、和食をやろうと。

日本に訪れる外国の方に、自分が「これ!」と思える和食を出してみたいという思いが芽生えたんです。

 

-開業までの経緯を教えてください!

帰国してからは独立まで突っ走ってやろうと、再スタートを切りました。

35歳までには独立したいなと思っていたのですが、まずは札幌の料亭で3年修業し、上京。上京してからは、新宿御苑「大木戸矢部」でお世話になり、5年弱ほど料理長をさせてもらいました。

料理長のときにはそれまでの売上を大幅にアップさせるなど、結果を出そうと急いでいたような気がしますね。でも、その達成感と自信が、独立の後押しになった気がします。後々、大きな勘違いと気づくのですが……。

 

-足で見つけた、南青山の物件

最初は四谷見附周辺で物件を探していましたが、なかなか見つからず。

そばを提供したかったので、店内に石臼を入れたいし、個室をひとつは欲しいという計画だと、最低15坪必要ということだったんですよね。

1年ちょっと探し続けていると、ネットの情報はアテにならないなと、自身の足で探すようになりました。日曜日には自転車で気になるエリアをウロチョロしながら、物件探しという日々です。

「銀座や新宿はお世話になった方もいるので、商売敵になりたくないな」とか「赤坂は自分の考える立地ではないな」とかいろいろしているうちに、ふと雑誌の取材で知り合った方から「青山や表参道ってどう?」と勧められたんです。

当時、僕は上京して8年くらい経っていたんですが、いままで一度も行ったことがないエリア。

じゃあ、一緒に歩いてみますかと、その人と街を散策していたときに見つけたのがいまの物件です。そのときはまだ建設中。気になって調べたら、想定していた家賃より15万円くらい上だった。それがある日みると、10万円くらい下がっていたんです。

知人の勧めもあって、ダメ元で家賃交渉し、こちらの熱意を伝える機会があり、満足いく内容で契約となりました。行動するまえにあきらめないでよかったと思います。

 

-開業してからの苦労を教えてください

料理長として実績を出して自信満々、理想もふくらませて開業したんですが、なかには売上ゼロで終わる日があるんですよ。 オープン当初は1週間でわずか3組のお客様ということもありました。お客様は僕ではなく、お店のお客様だったんだなと気づかされました。

独立してわずか1年でミシュランの星を獲得したので、周囲からすごいと言われることもありますが、実状はあと数ヶ月あのままだったら、いまお店がなかったかもしれません。

そんなときにある方に出会い、「ひとつひとつ直していくしかないね」とアドバイスを受けたんです。

そのときの僕は、スタッフが3人しかいないのに、予約があればすべて受けて対応していました。そうすると、お店が回しきれないんですよね。結果、一人ひとりのお客様に満足してもらえず信用を失っていました。僕はこれを負のサイクルと言っているんですが。目先の売上を重視したことがよくなかった。

それからというもの、僕たちでしっかりサービスできる人数だけの予約を受けて、力をつけてから、徐々にお客様を増やすように心がけました。その方からの「自分のルールをまず守れ!」という言葉はいまもよく覚えています。ビールの出し方ひとつから工夫しましたから。

 

-いま、お店で大切にしていることはなんですか?

メニューでいうと、いまはお任せのみです。

意識しているのは、コース料理でお出しした際、「お腹いっぱい」で食べきれないというような構成にしないことです。疲れないコース料理というのでしょうか。夏なら、「温かいもの」「冷たいもの」を交互に出したり、その間にも酸味の効いた一品を入れたりと、心地よい食後感を持ってもらえるよう工夫しています。

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また、〆のそばへのこだわりもあります。修業した「大木戸矢部」の親方が初めて作ってくださったそばの味と、修業時に親方からはじめて「そば、打ってみるか」と言われた時の感動は鮮明に覚えています。そんな名店仕込みのそばを、ぜひ味わってもらいたいです。

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経営や運営の面では、メニュー同様、疲れない空間を提供しようと、スタッフと話しています。なんとなく明るいお店、暗いお店って、入った瞬間わかりますよね。そうした居心地のいいお店を継続できたらと。

お客様に「おいしかったよ」と言われるのも、もちろんうれしいのですが、なにより「来てよかった」と言われたいです。

 

-これから独立する人へのメッセージ

業態などのことはお伝えできませんが、毎日全力。初心忘るべからず。ということが大切だと思います。

僕もいまでこそ食べログやミシュランなどのメディアからそれなりに評価されていますが、「勘違いするなよ」と、いつも自身に言い聞かせています。

とくに飲食業は最初、軌道にのるまでは、休んでいるひまはありません。寝てたら1円も稼げないわけですし。

それと、僕がそうだったんですが、あまりに暇でギリギリの経営状況から這い上がったほうがいいと、あえて厳しいことをお伝えしたいですかね。そうするとお客様に対しても、日々の売上に対しても感謝の気持ちが生まれる気がします。

 

10坪不動産についてはどうですか?

10坪くらいでスタートできるとベストですよね。

僕なら「立ち食いそば」がしたいかな。構想しているプランもあります笑。

あと、僕は家賃交渉などの対応に驚いたこともあったので、とくに初めて開業する人は、不動産の専門家の方を味方にしておくと、物件探しだけでなく、開業後のオーナーさんとの交渉が出たときにも心強い気がします。

 

-ありがとうございました

ミシュラン星を獲得されている「いち太」さんでも順風満帆のスタートを切った訳ではなく、一日一日改善と努力を積み重ね、常に自問自答し続けた結果なんだと知り、その言葉の重みを感じました!

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【※取材店舗情報※】

店舗名:いち太

住所:〒107-0062 東京都港区南青山3-4-6 AOYAMA346 101

店主:佐藤 太一

営業時間:17:30~23:00 (L.O.21:00)

電話番号:03-6455-4023

定休日:日曜・祝日

https://www.tokyoichita.com/

 
Shota Fujii